嚥下障害
嚥下障害とは
口の中に取り込んだ食べ物や水分が、のどや食道を通過して胃まで移動する過程に異常が生じた状態です。
この一連の動きが障害されると、食べ物を飲み込む際に ‘むせる’ ・ ‘飲み込みにくい’ などの症状が見られるようになり、食べ物がのどや気管に詰まると窒息します。
嚥下障害の症状
・むせる
・食べ物が のどにつかえる
・のどで痰がからんだような音がする
・食べ物を噛んで飲み込めない
・食べ物が口からこぼれる
・食べ物が口の中に残る
・食事に時間がかかる など
さらに、口から摂取する水分や食べ物が減ることで脱水や低栄養となったり、食べ物や唾液とともに細菌が気管に入ると肺の中で炎症が起き「誤嚥性肺炎」を発症したりすることもあります。
嚥下障害の原因
▽脳神経疾患
・「脳出血」や「脳梗塞」など ‘脳血管障害’ によるものが最も多くみられます。
・「パーキンソン病」や「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」などの ‘神経変性疾患’ は、進行にともない嚥下にかかわる神経にも異常が生じ、しばしば嚥下障害が生じます。
・ウイルスや手術による ‘脳神経麻痺’ でも、嚥下が困難となることがあります。
▽筋疾患
「多発性筋炎」や「封入体筋炎」「筋ジストロフィー」「重症筋無力症」などの ‘筋疾患’ では、のどの筋力低下や炎症により、嚥下障害が生じることがあります。
▽頭頸部がん
口腔・咽頭の悪性腫瘍は、腫瘍そのものによって嚥下機能に影響を及ぼしたり、化学放射線治療による副作用によって皮膚や粘膜に炎症を起こしたりすることで、嚥下障害が生じることがあります。
▽加齢
高齢者は、嚥下に必要な筋力が低下し、嚥下反射が遅くなる傾向があります。
加齢にともない唾液が減少したり、歯の本数が少なくなることも咀嚼しにくくなる要因となります。
▽先天的な異常
脳性麻痺や口唇口蓋裂のように、生まれつき嚥下にかかわる機能が弱かったり、口腔の形態に異常があったりする場合、嚥下障害をともなうことがあります。
▽その他
頚椎の変形、一部の薬剤なども、嚥下障害の原因となります。
嚥下障害の検査・診断
嚥下障害が疑われる場合には、‘問診’ や ‘身体所見の診察’ のほか、嚥下機能を評価するための ‘嚥下内視鏡検査(VE)’ や ‘嚥下造影検査(VF)’ などを行ないます。
*‘VE’ は、内視鏡を鼻から咽頭まで挿入し、実際に食べ物を飲み込む様子を観察する検査です。
*‘VF’ は、レントゲン(X線)で口やのどを透かし絵のように見ながら、飲み込んだ造影剤の動きや のどの動きを観察する検査です。
嚥下障害の治療
嚥下障害の治療は、“嚥下機能を維持・向上させることを目的としたもの”/ “肺炎や低栄養を防ぎ全身状態を維持することを目的としたもの”/ に分けることができます。
治療は、並行して進めていきます。
〔嚥下機能の維持・向上のための治療〕
▽まず行う治療は、‘嚥下訓練’ というリハビリテーションです。
嚥下障害に対するリハビリテーションは、‘間接嚥下訓練’(食べ物を用いずに口や のどの筋肉を鍛えるもの)/ ‘直接嚥下訓練’(ゼリーなどの食べ物を用いて実際に飲み込む練習をするもの)/ があります。
*間接嚥下訓練
‘基礎訓練’ とも呼ばれ、嚥下にかかわる器官の動きを改善させることを目的に行ないます。
・舌や首(頸部)をリラックスさせる ‘嚥下体操’
・嚥下に関連する器官の筋力を鍛える ‘頭部挙上訓練’
・寒冷刺激により嚥下反射が起こりやすくする ‘氷なめ訓練’
・誤嚥したものや痰を吐き出す力を強める ‘呼吸負荷トレーニング’
など 多くの訓練法があり、嚥下障害の部位や状態に応じて選択して行ないます。
*直接嚥下訓練
‘摂食訓練’ とも呼ばれ、実際に食べ物を用いることにより嚥下運動全体の適切なバランスを習得することを目的に行ないます。
嚥下内視鏡検査や嚥下造影検査で、誤嚥しにくい姿勢や食べ物の形態・量を確認し、医療スタッフとともに反復して実施し自立を目指します。
※ 訓練を続けても改善が乏しい場合は、食べ物が咽頭を通過しやすくする ‘嚥下機能改善手術’ が検討されます。
〔誤嚥・栄養障害を予防し全身状態を維持するのための治療〕
▽嚥下障害の程度が軽度の場合は、食べ物の形や硬さ(粘度)を工夫することで、誤嚥の予防効果が期待できます。
どのような食べ物が飲み込みやすいかは、嚥下の状態によって異なるものの、一般的に ‘水分に とろみ’ を付けることが有効な場合が多いです。
※ 栄養が十分にとれなくなると、免疫機能が低下し誤嚥性肺炎などの感染症にかかりやすくなります。
▽口から食べるだけでは十分な栄養がとれない場合は、チューブを鼻から胃まで入れたり(経鼻胃管)、腹部に小さい穴を開けて胃に直接栄養を入れる ‘胃瘻(ろう)’ を造ったりして栄養剤を注入します。
▽胃腸が十分に働かない場合は、高カロリー輸液を点滴するなどの ‘栄養療法’ が行なわれることもあります。
▽粘膜の感覚を改善させたり、唾液や食べ物に含まれる細菌を減らしたりするために、口の中をきれいにすることも重要です。
〔手術〕
以下の二つがあります。
▽ ‘嚥下機能改善手術’ : 飲み込みやすくすることを目的としたもの
▽ ‘誤嚥防止手術’ : 誤って気管・肺に水分や食物が入る誤嚥(ごえん)を防ぐためのもの
※ 誤嚥防止手術を行なうと、発声ができなくなりますが、痰の吸引が減り、口から食べられる可能性があります。
